日本バスケの”フィジカル”論 篠山竜青 × 佐藤晃一

自分で考え、判断、対応できる選手へ

 

佐藤「篠山選手はポイントガードとして、ゲームマネジメントをするようになったのは、いつ頃からですか。ゲームマネジメントを若いうちから経験することで、認知・判断の練習につながるのではと思っているのですが、どう思いますか」
篠山「僕は大学に入ってからですが、決まりの中でプレーをコールするといったことは、もっと早くから経験しておいても良かったかもしれません。ポイントガードは相手の強み弱み、ゲームの流れなどを考え、プレーを選択しますから、なぜそのプレーを選んだのか、説明できなければなりません。ほかのポジションであれば、とりあえず動きを覚えておけばいいといった部分はありますが、ポイントガードはプレーを選び、意図、理由付けを話せるようにならないと生き残っていけません。
ただ、ゲームコントロールという部分では、今回のワールドカップを通じて、多少自信を得た部分でもあります。例えば、ファンタジスタと呼ばれるアルゼンチンのカンパッソは、日本戦でも11アシストを記録しました。後でビデオを見返すと、想像もつかないようなパスはそのうちの2、3本。残りは派手に見えても、サインプレーで、いいスクリーンからのパスです。つまり、チームの意図として出されたパスが8割。チームプレーをしっかりと遂行していくことで、ゲームが成立していくということです。
他国のトップ選手たちを見た上で、自分自身のゲームに対する考え方や、 視野、セットプレーに対して視点を置く順番など、世界から遅れているとは思いませんでした。もちろん、スキルの部分で、大きな選手にディフェンスされ、ボールコントロールできずにターンオーバーにしてしまったといった反省は多々あります。一方で、頭を使ってやれているという自信は持ちましたし、これは日本の武器にもなり得ると感じました。みんなが思考し、コートを見て、プレーしていくことで、頭を使った、考えるバスケットボールのスタンダードを上げていけると思います」

選手自身の意識改革が必要

──来年の東京オリンピックに向けて、ワールドカップの経験からこれからやるべきことは何ですか。
篠山「自分の中で課題はたくさん見付かっていますから、整理整頓して、少しでも伸ばしていきます。川崎でもBリーグで勝つためには、フィジカルに、タフにディフェンスすることをテーマにやっていますし、そうしたチームが増えていますから、体のぶつけ方などの工夫を重ねます。個人的なレベルアップにつなげるためにも、一つ一つの質、強度を高めないといけません。ある意味で Bリーグに慣れてはいけないと思っています。それこそ予選から考えれば、マシュー・デラベドバ(オーストラリア)、デニス・シュルーダー(ドイツ)、ファクンド・カンパッソ(アルゼンチン)、ケンバ・ウォーカー(アメリカ)といった世界トップクラスのプレーヤーたちとやってきたので、それをスタンダードに、意識を高く持ってやっていかないとなりません。
また、そのためには、ほかの日本の選手たちの意識改革も求めたいですね。ヨーロッパでは気にもされないようなコンタクトに対して、日本の選手はリアクションすることが多いです。プレーに影響が出ると、レフェリーもどちらのファウルかコールしなければなりませんよね。ですから、選手が意識を変えることも必要です。そこは、変えなければならないスイッチだと思っています」
佐藤「コンタクトの話は、レフェリーにも関わってきますが、選手の意識改革も必要なんですね。アンダーカテゴリーの選手たちのプレーでも、フィニッシュの際に、ファウルをもらうためにドライブしているかのようなプレーが多いのも気になります。シュートを決め切るという意識より、ファウルされたことをアピールして終わってしまう。世界ではそれでは通用しません。ファウルを吹かれても、プレーをやめずに押し込んできます。そうした部分では選手自身のメンタリティーも変えていく必要がありますね。サッカーなどはファウルを大きくアピールするシーンが見られますが、ラグビーではあれだけコンタクトがあるのに全くと言っていいほど見られません。Bリーグも日本のバスケットボール界もラグビー型を目指すべきかもしれません。
篠山選手の言葉を借りれば、我々スタッフももっと『ちゃんとやる』ということを感じています。体のコンタクトに関しても、先に相手に当たれとか、もっと口やかましく言い続けることもできましたし、準備にしても、よりゲームを理解するために、突き詰められた部分はあります。トレーニングに関しては、もっとチャレンジしても良かったのではと話し合っています。選手のコンディションを整えながら、体調管理に介入するなどしながら、もっともっと鍛える。今のラグビー日本代表の活躍を見ていると刺激になりますし、勉強にもなります」
──ジュニアの選手たちにほかに伝えたいことはありますか。
篠山「僕が学生の頃は、ワールドカップに出て活躍するなんて想像もしていませんでした。日本代表のユニフォームを着ることが目標でした。ですから、今の状況に自分自身びっくりしているわけです。そうした部分のスタンダードも上げてほしいですね。特にアンダーカテゴリーの代表に選ばれているような選手たちは、全国大会で勝つだけではなく、世界の同じ世代は A代表とプレーしていたり、プロデビューして活躍している選手もいるということを意識してほしいですね。
それから、3Pシュートが世界のバスケットボールのトレンドになってきていますから、積極的にチャレンジしてほしいですね。アウトナンバーのケースでもどんどん打ってきます。インサイドに入れて、ディフェンスを収縮させて、返ってきたボールをフリーで打つといった日本のバスケットとは違います。ミニバスにも3Pシュートを導入したらいいのではと思うくらいです」
──Bリーグにはローポストに外国籍選手が多いですからね。
佐藤「そうしたプレースタイルはコーチやGMの考え方によって変わるのですよね」
篠山「3Pシュートが大切と言いながら、今、自分がGMだとしても、ローポスト中心のゲームをしますね。現状のBリーグではその方が勝てると思いますから。ステフィン・カリーのように、それを覆す確率で3Pシュートを決める選手が出てこないと変わらないでしょう。ですから、これからの選手は40~45%くらいの成功率を求められるようになりますね」

飯田康二/月刊バスケットボール

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