片峯聡太監督(福岡大附大濠高)が語る “こだわり”の指導論

コンバートに至るまでには順序を踏んでいることを知っていただきたい

―本来、選手たちがそのような身長差などを考えながらプレーしてほしいものですよね?
「そうですね。自分のストロングポイントはどこなのか、相手のウィークポイントはどこなのかを考えてほしいです。逆に、ビッグマンも自分より15cm大きい選手と戦うことだけでなく、自分よりも15cm小さい選手と戦うことも多いので。この辺りが、プレーを磨いていく、選手を育てていく上での判断基準として長い間あります」
―大濠でビッグマンのコンバートと言えば、中村選手(太地/→法政大→京都ほか→韓国・原州DB)が190cmでポイントガードをしていました。入学当時からその片鱗はありましたか?
「大きい選手の良い部分をしっかりと見付けてあげることが大事だと思っています。確かに170cmの選手と比較すると、判断力やシュート、ドリブル、パスのどれも劣っていることはあります。どこにコンバートしていくかを考える中で、その選手がほかの選手よりも秀でているものは何かを見付けてあげることが必要なのです。 彼の場合は視野の広さ、そして片手でボールを扱うことができました。また、アシストすることに対して達成感を感じる気質があったので、ポイントガードとしての資質を兼ね備えていると感じましたね。もちろん、最初はとんでもない所へパスをしたり、愛情のない強いパスをしたり…(笑)。ただ、それができるということは、将来像が見えると同時にスキルを磨いていけば良くなるという感じだったのです。そこで、“190cmのポイントガード”というこだわりを持ちながら育てていきました」
―今、三河でシューターとして活躍する金丸選手(晃輔/→明治大)も入学当時はセンターでした。大濠は以前からそのようなことに抵抗がなかったように思います。これは大濠のカラーだと思いますか?
「サイズに関係なく、選手の適正を生かすというのは以前からありました。ただ、バスケットボールは確率のスポーツですから、確率の高くあるべきところから高くしていくことが重要だと思っています。だからと言って、ペイント周辺でリングに背を向けてプレーすることではないのですが、そこから徐々に外側へとプレーを広げていく感じです。 まず1年生はペイント内で2点を取る、ファウルをもらうという技術をしっかりと教えていきます。2、3年生になって、そのシュートレンジを広げていくというのが大濠のスタイルですね。上級生がアウトサイドでプレーする華やかな部分を見ていただいて、『こういうプレーヤーになれるんだ』という将来像は確かですが、そこに至るまでには順序を踏んでいることを知っておいていただきたいと思っています」

 

さまざまな状況判断を基に、的確にプレーすることを教えていく必要がある

―選手のポジションをコンバートしていく上で難しい部分は、どのようなことだと感じていますか?
「器用貧乏にはなってほしくはありませんね。最初から外、外でプレーさせてしまうと、良い部分が見えない選手になってしまう恐れがあります。それだけは選手に申し訳ないと思うので、プロセスを大切にしていきたいのです。ですから、パスがある選手でも、パスがあるからこそ、リングへアタックさせてきました。そしてアシスト、さらにゲームコントロールという感じです。全員が同じプレーヤーではありませんから」
―最近では、木林選手(毅/→筑波大)が2mのフォワードでしたね。彼は初めからシュートに光るものを感じていましたか?
「シュートに魅力がありましたね。迷いました。最初から“2mのシューター”でいこうかと。でも、3Pシュートが入るだけで将来的にどのぐらい価値のある選手になるのかを考えました。そうなると、ペイント内で2点が取れる、ファウルをもらってつなぐことができるというようなことを最初に教えておくことで、彼にはプラスになるのではないかな、と。だからミドルのジャンプシュートよりも、リングへのアタックと3Pシュートを教えていきました」
―木林選手よりも大きな選手がいない中、彼をインサイドとして起用する気は全くありませんでしたか?
「全くありませんでした。彼がリングに背を向けたプレーはしたこともないですし、させたこともないです。ドライブからのパワープレーばかりだったので、ちょっとしたステップやフローターなどももう少し教えるべきだったという反省はありますが。」
―片峯監督は当然、選手の今も見ていると思いますが、その先も見据えているということですね。
「まずは5年後ですね。この動きができればOKというものではないですし、さまざまな状況判断を基に的確にプレーすることをこの年代までに教えていく必要があるはずです。あとは、大学やプロなどになってたきに役割やシステムなどが与えられてくるので、その役割をしっかりとこなせるような選手をしっかりと育てていかなければなりません。“この動きしかできない”という選手を作ってしまうと、『このシステムには合わない』という場合が出てきてしまいます。そういう選手にはなってほしくないですし、そういう育成をしてはいけないと思っています」

山本達人 / 月刊バスケットボール

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