NBAヘッドコーチに一番近い日本人 吉本泰輔
「自分になり得る最高のヘッドコーチになりたい」
東京オリンピックが幕を閉じた翌日、アメリカ・ネバダ州ラスベガスでNBAのサマーリーグが始まった。「若手の登竜門」と言われる同リーグは、選手だけでなく、コーチやレフェリーらにとってもNBAという次のステップへの準備の場だ。
その舞台で、ニューヨーク・ニックスのヘッドコーチ(HC)に抜擢されたのが、昨シーズンNBA年間最優秀コーチに輝いたトム・シボドーHC補佐の吉本泰輔。NBA広報によるとサマーリーグで日本人がヘッドコーチを務めるのは初めてだ。
吉本はフォーダム大学大学院卒業後、ニュージャージー・ネッツ(現・ブルックリン)の関連会社に就職したのをきっかけにNBAでのコーチ歴も長いマイク・フラテロHCの下、ウクライナ代表のビデオコーディネーターを務め、2011年からシボドーHCの下シカゴ・ブルズで4シーズン、2015-16シーズンにはデンバー・ナゲッツのマイケル・マローン配下でビデオコーディネーターを務めた。シボドーがミネソタ・ティンバーウルブズのバスケットボール編成部長兼ヘッドコーチになった際には、特別補佐兼選手育成コーチを任され、ジョージア大でストラテジー&ビデオ・ディレクターとなった2019-20シーズンを経て、昨シーズン現職に就いた。今シーズンは彼にとってNBA11年目だ。
高校を卒業して渡米した時は、ヘッドコーチになりたいという具体的な夢があったわけではなかった。ただアメリカで自らもバスケットボールをプレイする中で、ジワジワと自分がやりたいことが芽生えてきた。「大学(NCAAディビジョンⅢに属するジョンソン・アンド・ウェルズ大)でバスケットボールをやっていて、卒業する時に何をしたいかと考えた時にバスケットボールに関わっていたいと思いました。そして、その大学で1年間コーチをする機会を得て、この仕事がしたいと心から思ったんです。僕は教えることも昔から好きでした」と吉本。大学院はNCAAディビジョンⅠのフォーダム大に進学し、バスケットボール部のマネージャーを務めコーチングを探究。教育学を専攻したのも「コーチを目指す上でどのように教育するかを学ぼうと思いました。勉強を教えるのもバスケットを教えるのも教育であり同じだと感じたので」。目指すものが決まったら、そこにたどり着くため多角的に学んだ。
大学院卒業後は、前述のようにチャンスを次々と掴んでいった。「年月を重ねる中で、僕は多くのコーチから学ばせて貰いました」と吉本。「こうやってサマーリーグでコーチを務めることは、最高の機会です」と目を輝かせた。