佐古賢一、萩原美樹子が語る~ 育成年代の指導の「難しさ」と「ヒント」(アンダーカテゴリー日本代表ヘッドコーチ)

昨年末の12月26日に、日本バスケットボール協会(JBA)は、コーチカンファレンスを開催。育成年代のコーチングをテーマに佐古賢⼀(アンダーカテゴリー男⼦⽇本代表ヘッドコーチ、日本代表アシスタントコーチ)、萩原美樹⼦(アンダーカテゴリー女子⽇本代表ヘッドコーチ)が、それぞれ指導の実例を発表した後、パネルディスカッションを行った。オンラインで行われたこのカンファレンスは、JBA技術委員会指導者養成部会が運営しているが、同部会長の鈴木淳氏はその目的を「アンダーカテゴリーまで含めた日本代表での取り組みを伝えていくことを中心に考えています。それは、プレーヤーのスキルレベルやサイズなどの違いがあっても、ベースとなる部分は同じであり、多くの指導者の方と情報を共有したいとの思いからです」と説明する。今回の出演者はモデレーターを務めた佐藤晃一氏(JBA技術委員会スポーツパフォーマンス部会長)が推薦したというが、佐藤氏は「私は立場上、アンダーカテゴリーからA代表まで、おそらく誰よりも大会や強化合宿といったさまざまな代表活動の現場を見てきています」とした上で、「アンダーカテゴリーのコーチは、多くの育成年代の指導者の皆さんにとって、貴重な情報を持っていると感じていましたし、それを知ってもらいたいと思っていました」とその理由を説明する。
まず、佐藤氏からU16世代のプレーヤーに求めることを聞かれると、佐古氏は第一声で「声が出ないことに戸惑っている」と話す。「分かっているのか、いないのか。やりたいのか、やりたくないのか。意思表示を読み取るのに時間がかかりました。技術的なことより、最初の準備として自己紹介くらいはちゃんとできるようにと思いました」と佐古氏。「全く同感」と萩原氏も続く。「年代的なこともあり、恥ずかしいというのもあるのでしょうが、『声』は技術の一部ですから。分かっていないと声が出せません。『声を出して!』と言うと「ファイトー」って。そうじゃないからと」。それぞれ、男子と女子では求められていることも多少違いがある。男子のアンダーカテゴリー、特にU16では、サイズアップを図るため、大型の選手を集め、ポジションをコンバートできるような育成に力を入れている。女子も同様であるが、すでに世界レベルに達している女子は、大会での好成績も期待されている。それでも、プレーヤーとの接し方という部分では共通している悩みも多そうだ。

 

萩原美樹子氏
U19ワールドカップで指揮を執る萩原美樹子氏(写真/fiba.basketball)
佐古賢一氏
U16日本代表を指導する佐古賢一氏

 

現役時代に感じた“思い”を今の指導の場に生かしていく

現役時代にはアトランタオリンピック出場、WNBAでプレーするなどトッププレーヤーとして活躍した萩原氏は、現役引退後は大学に進学するなどし、バスケットボールから離れた時期があった。その後、指導者として再びバスケットボール界に戻ってきた経緯があるのだが「バーンアウトの状態でした」と引退当時を振り返る。「私が現役時代に日本代表だとか、オリンピックに行けたということは、ひとえにコーチのおかげで、コーチが本当によく我慢してくれたなと」とする一方で、当時の激しく、厳しい練習環境の中で「『やらねばならぬ』といった状況で、『今日休んだらコーチに叱られる』とか、外発的な動機でプレーしていました」とバーンアウトとなったときのつらい胸の内を明かした。現在は指導するプレーヤーたちがそういう気持ちにならないよう「内発的な動機で『自分がやりたいから、こうしたいからこうするんだ』という選手になってもらうにはどうしたらいいんだろうと、自分がやってきたことを考えながら、手探りしています」と現状を話す。
日本代表を長くけん引し、世界選手権出場を果たした佐古氏にしても、「今日は怒られたくない」、「自分では頑張ってやっているのに『頑張ってない』って言われて、どうしていいか分からなかった」といった経験があったと言う。「どうしてもっと褒めてくれないのかと思っていました。問題児だって言われ続けて、大人までなってしまったので」と笑いながら話すが、「だから、選手がいいチャレンジとかをしてくれると、すぐに褒めるんです。『おぉ、すげぇ~』みたいに、独り言のように、聞こえるように」。そんな姿を見ている佐藤氏は「おおらかに指導しているな」と感じているそうだ。
佐古氏は「U16は、どんどん新しいことに挑戦していってもらいたいのです。『これはダメ』『これが正解』ではチャレンジなんかできませんから…。挑戦しやすい場の雰囲気作りを意識しているつもりです」とし、「ただ、U18になると変わります。今度は『戦う』とは何? と、キーワードが変わってくるのです。U18になるとバスケットに対する思い、熱量も違ってきます。U18で集まってくる選手はチームでメインになっている選手がほとんどなので、責任感もあります。そこで『日本の代表として戦う』とはどういうことか、『ナショナルチームの戦い方』はどうだとかということをU18では教え込んでいかないといけない時期だと思っています」と年代ごとで、プレーヤーとの接し方、関わり方を変えていると言う。

選手同士のミーティングで目標設定と、自分で考える力を
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