「4アウト1イン モーションオフェンスの考え方と組み立て方」~藤田将弘氏(日体大男子監督)
オフェンスは『頑張れ!』『走れ!』だけでは難しい
オフェンスと言っても、5人の選手が思うまま勝手に動いていても、確率の高いシュートは決めることはできない。バスケットボールのオフェンスをどのように考え、それを組み立てていくのかを整理していかないと、コーチも選手も頭を抱えるだけ。それでは一体、どのようなプロセスやルールでオフェンスを5人が実行していくのか…藤田将弘氏(日本体育大学バスケットボール部男子監督)に、オフェンス考え方や組み立て方、そして簡単なルールを用いたオフェンスなどについて聞いてみた。
――得点するためのオフェンスとは、どのようなものだと考えていますか?
「バスケットボールという競技の特性は、『ボールをリングに入れること』で、そしてその確率を求めていくスポーツです。ネットを挟んだネット型の競技とは異なり、選手と選手が常に対峙しています。自分の思いどおりにいかないことが圧倒的に多く、意図的に有効的なスペースを作らねばなりません。リングに向かってアタックするのであればリングから離れた所、また身長が高かったりパワーがあったりする選手はリングに近い所でボールを受けられるという準備が必要となってきます。そして、パターンオフェンスとフリーランスともにメリットとデメリットがあると思っています」
――高校や中学、ミニバスと年齢が下がるほど、フリーランスでのオフェンスは難しくなりますよね?
「言葉で表現するのは難しいのですが、まず味方(チームメイト)との位置関係を理解させることから始めます。加えて、ボールの位置とリングの位置も理解できるような、ある程度、決まったポジション(場所)を固定して教えます」
――『味方との位置関係』とは、選手と選手の距離のことですか?
「隣の選手との距離が、だいたい4~5mぐらい離れていることです。これが良いスペーシング、隊形につながっていきます。しかし、試合では選手が動くので、そのスペーシングがいろいろと変化していくのです。ここにプレーの原則と、ある程度のルールが必要となってきますので、その部分は各コーチの描くスタイルや選手、対戦相手などを考えていく必要があります」
――単純にスペーシングと言えば、3アウト2インや4アウト1イン、今NBAで盛んに行われている5アウトなどがあります。これらをベースに考えていくということでしょうか?
「どれが良いかは一概には言えません。3アウト2インや4アウト1インなど、それぞれにメリットとデメリットがあるので、チームの選手や特徴を考慮した方が良いと思います。もちろん、コーチの好みもあります」
――簡単に言えば、コーチはアウトサイドが3人なのか、4人なのか、5人なのか…を決めた方が良いですか?
「決めた方が選手たちは理解しやすいと思います。『頑張れ!』『走れ!』だけでは難しいですね(笑)。バスケットボールはチームスポーツですから、自分たちがこれからするオフェンスを選手間で共通理解していくことが必要なのです」
5人全員が全てのポジションに動くことができることが重要
――チームのオフェンスの目標値(得点)をどのように考えていますか?
「自分たちのチームがあるステージで『勝つために』ということを考えた場合、現在有する選手で1試合何点を取って、相手を何点で抑えられるかということを考えます。例えば、80得点するためには、誰をどのように使っていくのか、どのような展開をしていけば良いのかを分析する必要があります。これを描くことができないと、何をどのようにすれば良いのかが分からなくなってしまいます」
――対戦相手とのレベルが近いほど、ハーフコートオフェンスで得点できれば、目標としているチームの得点に近付きますよね?
「ハーフコートオフェンスは得点するための“チャンス作り”で、その結果が点数になるのです。1個のボールで1人の選手がシュートするので、そのシュート確率が何パーセントなのかということはオフェンスの組み立てる上で必要ですし、選手個人で考えなければならないのは、シュートタイミングだったり、シュートセレクションだったりします。ディフェンスの手が挙がっている所でシュートするよりも、誰もいない所でシュートした方がいいですからね。それに、リングに近い所でシュートした方が確率も高いです」
――さまざまなメリットやデメリットを考慮したとき、カテゴリーにかかわらず、アウトサイドの4人(4アウト1イン)というオフェンスは取り組みやすいですか? また、メリットやデメリットは何ですか?
「誰もいない空間がゴール下にある時間が長いという部分が最大のメリットだと思います。デメリットとしては、特にパターンオフェンスの場合ではディフェンスにプレーを読まれやすいので、対ディフェンスという練習が必要になってきます。パッシングだからボールを回そうという意識になってしまうと、ボールが3Pラインの外側ばかりを動いていることになってしまい、ディフェンスが優位になります。そのため、3回に1回はインサイドにボールを入れる(センターに限らず)ことが大切になってきます。そして、4アウト1インは誰もがインサイドでプレーできて、誰もがアウトサイドでプレーできるというのもメリットの1つです。これはアンダーカテゴリーには特に必要なことで、大きい選手がインサイド、小さい選手がアウトサイドという固定観念は捨てなければなりません。5人全員が全てのポジションに動くことができることが重要なのです」
――数多くあると思いますが、4アウト1インのオフェンスで導入しやすいものは何でしょうか?
「コーチングしやすい、選手が理解しやすいという点では、“フレックス”だと思っています。ディフェンスの読みを含めて、4アウト1インのモーションオフェンスとしては導入しやすいかもしれませんね」