「4アウト1イン モーションオフェンスの考え方と組み立て方」~藤田将弘氏(日体大男子監督)

フレックスはサイズに関係なくオフェンスができる

――“フレックス”が考案されてから、50年以上(1967年に考案されたと言われている)が経過しています。それでも、NBAをはじめ、世界中でいまだに用いられているということを考えてみても、効果的なオフェンスの1つだということが言えますね。
「20年ぐらい前までは身体的な特徴、サイズの大きさを前面に出して行うスタイルが流行していましたが、今はヨーロッパをはじめビッグマンも3Pシュートを放つ時代です。アンダーカテゴリー(ミニバス、中学、高校など)で育成ということを考えたとき、サイズに関係なくアウトサイド、インサイド問わずにオフェンスができるということからも効果的なオフェンスだと考えています。そういった部分からも年齢に関係なく、取り組むべきオフェンスの1つではないでしょうか。バスケットボールの原理・原則が分かっていない年代の選手でも、このフレックスを導入することでバスケットボールIQが高くなるはずです。加えて、バスケットボールの質を高める攻撃パターンなので、チームのオフェンスも良くなってくると思っています」
――どのような部分が最も効果的だと思いますか?
「大学でも毎日、練習を行います。それはスペーシングであったり、ディフェンスの読みであったり、バスケットボールに重要な部分が養われていく部分です。選手が動き続けることで、良い習慣が身に付いてきますし、自分たちでさまざまなパターンを作っていくこともできますからね。ですから、ミニバスから大学、プロまでやるべきものだと思っています」
――“フレックス”は非常にシンプルなオフェンスですが、選手間のコミュニケーションがないと成立しません。タイミングは重要ですし、オフボールの動きも重要です。
「非常にシンプルですが、バスケットボールのオフェンスに必要なものは網羅されています。選手として、一度は通るべき道ではないでしょうか」
――当たり前ですが、「ボールが動いて、選手が動く」というオフェンスの理想形ですね。
「それを2秒以内に行うことができるように練習していきます。これはパッシングゲームの原則(※詳細はセミナー参照)です。その中で、スクリーンやカットを臨機応変に自分のディフェンダーと戦っていくということになります」
――ここまでの話だけでも、オフェンスの仕組みというものがいかに多いかが分かります。
「そうですね。そこに選手間のボキャブラリーが増え、選手同士、選手とコーチの会話も多くなってくると思います。チーム作りといった側面からも、非常に良いと実感しています」

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安易にボールに近付いたプレーをしない方が選択肢が広がる

――少し細かい話になってきますが、4アウト1インでプレーヤーの“2ギャップ“について、少し教えてください。
「プレーヤーがリングに正対した状況で、パスをする所も2か所以上ありますし、自分のプレーを選択する上でも2つ(左右)の道があるということです」
――あとは冒頭に出てきたプレーヤーの特徴によって、組み立ててていくということですか? ドライブが得意なのか、アウトサイドシュートやインサイドのパワープレーが得意なのか。
「そうですね。その組み立ては多種多様であらゆるパターンがあると思います。プレーヤーの特徴を理解して、スクリーンのセットを考えることが必要になってきますね。“フレックス”という形で継続性のあるオフェンスということだけでなく、ボールをリングに入れるための共通理解ということです。また、バスケットボールを学ぶ上でも非常に良いのがモーションオフェンスの“フレックス”だと考えています」
――モーションオフェンスでは、ドリブルの使い方には注意したいところですよね。やはり、ドリブルを無意味に使うことは避けたいですか?
「第一に、ドリブルよりもパスの方が速いということはあります。ただし、攻撃という部分でドリブルを使うことは出てきます。もちろん、ボールを運んだり、トラブルを回避したり、パスアングルを変えるというときにも必要になってきます。当然、ドライブにも使います。最も注意したいのは、ボールをキャッチしてすぐにボールを足元に落とすようなドリブルは攻撃性が弱まってしまうからです。ドリブルの有効的な使い方は、このようなモーションオフェンスで学ぶことも可能だと思っています」
――極論ですが、オフェンスというものは、プレーヤーが動きたいタイミングで動きたい場所へ勝手に動くものではないということですか?
「そこが“規則性を持った部分”ということになります。プレーヤー同士の距離が適切であって2ギャップのスペースです。チームメイトを助けるためにボールへ近付くことは出てきますが、モーションオフェンスの動きで考えたときにルールが必要になってくるのです。ボールスクリーンやハンドオフなどは、ショットクロックが少なくなってきたときに取っておきたいものです。シュートは確率を考えなければいつでも可能です。しかし先を急いで、安易にボールに近付いたプレーをしない方がプレーの選択肢が広がることとなり、チームとしてのシュート確率を上げることにもつながっていきます。チームプレーとしてオフェンスを組み立てていく重要性というものが、このようなことで描いていけることも“フレックス”の魅力だと感じています」

山本達人/月刊バスケットボール

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