ジュニア指導の虎の穴 ~ ジュニアエキスパート 養成講習会~

2019年度のコーチライセンス制度改定に伴い新設されたコーチライセンス”ジュニアエキスパート”。どんなプレーヤーを指導対象とし、何を目的としたライセンスなのか。養成講習会の模様とともに、求める指導者像をレポートする。

B級以上の指導者がジュニア強化のエキスパートに

1月から2月にかけて、日本バスケットボール協会(JBA)公認コーチライセンスの一つ、ジュニアエキスパートの養成講習会が開催された。ジュニアエキスパートは2019年度のコーチライセンス制度の改定に伴い新設された資格だが、養成講習会はコロナ禍による中止もあり、今回が2回目の実施となった。
ジュニアエキスパートは育成世代に特化したライセンスとなるが、受講資格はB級コーチ以上、文字どおりエキスパートの養成である。こうしたカテゴリーのコーチ養成の必要性について、JBA指導者養成セクションのマネージャーを務める鈴木淳氏は次のように説明する。

「2019年度のライセンス制度の改定に際し、ライセンスの位置づけを再設定しました(図1参照)。横軸が指導対象の習熟度・年齢、縦軸が強化・育成・普及ですが、それぞれに該当するライセンスを配置するとJBAのコーチライセンスは積み上げ式ですからE~A、Sとライセンスが上がるほど習熟度・対象年齢も上がってくる傾向が強くなります。現状として育成年代にとって必要なライセンスはC級やD級です。積み上げの下の段階でもあり、資格取得のために求められる内容はスポーツ指導の基本的な部分です。どちらかというと普及側面の強いライセンスなのですが、一方で育成年代にも、バスケットボール競技に特化した、強化につながる役割も必要だろうということになったのです。
同時に、他国の状況などを調べていく中で、ユース全体のプログラムを統括するディレクターの立場となるコーチを養成しなければならないと考えました。例えばスペインでは4歳ぐらいの年齢区分でそれぞれチームがあり、それぞれにコーチがいます。そしてユースチーム全カテゴリーを統括するディレクターコーチがいるわけです。日本でもU15、U12とクラブチームが増えてきていますし、Bリーグにおいてもユースチームの運営はクラブライセンスの要件にもなっていますから、育成年代を総括してディレクションしていくコーチの養成が必要な状況となってきたのです」

 

JBA指導者資格
<図1>JBA指導者資格

 

つまりジュニアエキスパートは育成年代のプレーヤーの強化を目的としたライセンスとなる。ライセンスの受講資格がB級以上となっているのも「統括する立場では、今のトップカテゴリーの考え方、バスケットボールの知識、ジュニアの育成の精神的な部分や体の成長など、全てにおいて総合的に知識を持っている必要があります」と説明する。
ジュニアエキスパートの養成講習は前期、後期とそれぞれ4日間ずつ、計8日間の講習(今回の講習は1月21~24日、2月2~5日)で、内容もぎっしり詰まっている。ある一日を例に取ると「スポーツ心理学」「発育発達と指導法」「運動学」「技術論(コーディネーショントレーニング)」「技術論(シュートの指導法/フォーム作り)」「技術論(シュートの指導法/成果と段階の整理)」の座学、実技各90分の講義が朝9時から夜8時まで組まれているのだ。トータルすると37講義+検定試験、そして課題提出が求められる。
「この講習会を通して、ユース育成の一貫したプログラムを作成していくように、カリキュラムを組んでいます。そうして作られた育成プログラムの提出が課題にもなっています」と言い、講習を受ければライセンスが得られるわけではなく、1回目の養成講習でも不合格となった受講生は少なからずいたという。育成プログラムのゴールは「U18でプロとして通用できる選手の育成」であり、それがグローバルスタンダードという認識だ。

育成年代の強化にグローバルスタンダードを

「海外の育成の進んでいる国はプロコーチのライセンスを持っている人がカリキュラムを作って育成しています。クラブにはユースディレクターがいて、上位のカテゴリーで何が必要かを逆算して指導に当たっています」と話すのは、ジュニアエキスパート養成講習でメイン講師を務める鈴木良和氏。鈴木(良)氏は東京2020オリンピックでは男子日本代表のサポートスタッフ、FIBA女子アジアカップ2021では女子日本代表のアシスタントコーチを務めているが、もともとは育成年代の指導の専門家である。「代表として世界で見てきたことを伝えていくことが使命」とし、ジュニアエキスパートの育成に尽力している。

 

ゲームモデル
<図2>ゲームモデル
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