井手口孝監督(福岡第一高)が語る“こだわり”の指導論

『本当のドリブル、パス、シュートを身に付けることは簡単ではない』

12月に東京で開催されるウインターカップ。昨年は好ガードの河村勇輝(→東海大)を擁し、チャンピオンとなった福岡第一高(福岡)。3連覇を狙う同校を率いるのは、就任26年目の井手口孝監督である。そんな井手口監督の“こだわりについて話をうかがい、福岡第一高の強さの秘密をひも解いていきたい。

  

―井手口監督がバスケットボールを指導していく上で、こだわっているということは何でしょうか?
「“激しくディフェンスをして、トランジションを速くする”というシンプルなこと、それだけですね」
―それらを突き詰めていくために、井手口監督が大切にしていることを教えてください。
「常にピリピリとした緊張感を持って、相手の隙を逃さないことです。少しでも隙があればボールを奪いに行きますし、チャンスだと思えば一歩でも速く走り出すこともできます。簡単にできそうで、なかなかできないことですが、これらにスキルはあまり必要ではありません。 そもそも、バスケットボールは好きだけれどもサイズないという選手たちで始めたのがきっかけになっています」
―サイズを上回るための何かを考えて、始めたということですね。
「大きい選手より少しでも速く…ということが、以前よりも大きな選手が来ている今でも継続している感じです」
―“相手の隙を逃さない”というきゅう覚は、どのようして磨いていくのでしょうか?
「最終的には本能などの能力が関わってきますが、『こういうときに相手は油断しているよね?』『ここはチャンスだよね?』『大きい選手のこういう部分は隙があるよね?』ということを練習中などにアドバイスをしていきます。もちろん、練習でドリル化しているものもあります。実はこの部分を結構やっています。そういうことが試合中のふとした場面に出てくるのだと思います」
―選手たちがそのアドバイスなどを積み重ねていくことで、“隙を逃さない”というプレーが生まれるということですね。
「気付いたときは体が勝手動いているようにならなければなりません。自分たちが気付くときには相手も気付きますからね(笑)。選手には『反応ではなく、反射』だと言っています。例えば、熱い物を触ったとき、熱いから手を放すのではなく、反射で勝手に手を離す…というようなイメージです」
―井手口監督がイメージしたバスケットボールのスタイルを実践するために、最も難しいスキルや技術は、どのようなものになりますか?
「ドリブル、パス、シュート…この3つの技術かもしれません。本当のドリブル、本当のパス、本当のシュートを身に付けることは、簡単ではありませんね」
―井手口監督の考える“本当の”技術とは何でしょうか?
「ドリブルとパスは“強さ”ですね。シュートは決めるということになります。中学と高校のプレッシャーでは大きく異なるので、緩かったり、多少雑だったりするパスやドリブルでもプレーが成立しているのです」

〈関連リンク〉井手口 孝氏がトランジションの“こだわり”を伝授! (セミナー動画/プレミアム・記事会員限定)

 

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