片峯聡太監督(福岡大附大濠高)が語る “こだわり”の指導論
5人全員が状況判断をして誰もがシュート、ドライブ、パスができるようにしたい
2020年12月に東京で開催されたウインターカップは、コロナ禍を経て、初めての全国大会となった。前年の決勝は福岡決戦となったが僅差で敗れ、リベンジを果たしたい福岡大附大濠高(福岡)の片峯聡太監督に、ウインターカップを前に話をうかがった。大濠の強さの秘密や、ビッグマンの育成、コンバート、勝利と育成のバランスなどについて語ってもらった。
―片峯監督が理想とするバスケットボールのスタイルを教えてください。
「理想はガードとフォワード、センターというよりも、5人全員が状況判断をして誰もがシュート、ドライブ、パスができるような選手を育成していきたいです。それが、より優れた選手たちがスターターになってくるでしょうし、それがこれから勝っていくことができるチームだと思っています」
―片峯監督も福岡大附大濠高の出身で故・田中國明監督に教わりましたが、当時と今で違いはありますか?
「違いはありますね。我々の高校時代は、大濠はサイズがあって動ける選手も多く、有利な部分もありました。今は全国的に見ても留学生を擁するチームが多く、そこに対してどうアタックしていくかが問われている時代です。そのことによって大濠のビッグマンたちがアジアや世界に出たときに、自分よりも大きく、能力のある選手たちとどう競っていくのかという学びがたくさんあるのも事実です。この辺りの変化というものはあると思っています」
―選手のサイズを大きくすることに関しては、どのように考えていますか?
「サイズのある選手たちがそのようのことができれば、将来的にも非常に魅力的なバスケットボールで、そういうチームになると考えています。こういう理想を持ちながら、指導をしているところです」
―5人全員がリングに正対し、ポジションレスでプレーする場合、サイズのある選手が当然ポジションをアップしていくと思います。その部分で片峯監督が難しいと感じている部分はどのようなことでしょうか?
「一番はファンダメンタル部分の未熟さが挙げられると思います。例えば、190cmと180cmの選手を比べたときにファンダメンタルでの差があり、その部分でのミスなどが高校に入ると出てきます」
―それはなぜだと思いますか? サイズの小さい選手の方が技術の習得において早熟だということでしょうか?
「それはあるかもしれません。また、大きい選手だからリングに背を向けてプレーしたり、小さい選手だからハンドリングから練習したり…こういう部分に育成の難しさがあると思っています。その結果が、18歳を過ぎた頃で『さぁ、世界と戦うぞ!』といったときに壁にぶつかっているような気がします。そういったことを大濠でビッグマンを預かったときに感じていますね。 高校に入ってきて、リングを背にしてボールをもらおうとしたり、ドライブもドリブル1つですぐにリングに背を向けたり…この意識や考え方を変えることから教え始めるパターンがとても多いです」
〈関連リンク〉片峯聡太氏が勝利と育成のバランスを語る (セミナー動画/プレミアム・記事会員限定)
身長差が15cmまでであれば、ちょっとした工夫で逆転できる
―ミニバスや中学(U15も含む)の段階で、選手たちにポジションの概念があるということですよね? 限られた概念のみで練習をしてきている場合が多いと思いますか?
「限られたものでしかプレーができないということは、限られた練習しかしていないということにつながると思います」
―片峯監督は、190cmでも200cmでもチャンスがあればガードのポジションにこだわらず、何でもできる選手というのが理想ですか?
「はい、それがプレーヤーとして一番の楽しみではないでしょうか。ただ、その中で競い合いがあり、だからこそ小さい選手は徹底的に精度や状況判断の的確さなどにこだわらないといけないと思うのです。小さい選手がだめだとは思っていません。それが突き抜けてくる選手が、小さい選手でも生き残っていくのです。このようなバランスを取りながら、日頃の練習をしています」
―片峯監督の考えるサイズ的な“理想のラインナップ”とは?
「理想は190cmで5人!(笑)。自分の中で“15cmルール”というものがあるのです。これは、身長差が15cmまでであれば、ジャンプやコンタクトの仕方、ちょっとした工夫で逆転できると思っているからです。バスケットボールという競技の特性上、さすがに20~30cmの差になると厳しいのですが…。 世界を見れば2mは当たり前に存在しますし、国内の留学生でも200~205cmの選手が多いですからね」
―そのサイズ感で理想のバスケットボールスタイルを実現したいですね。
「そうですね。そういう差を打破していくために、190cmの5人が“ファンダメンタルを持った全員が状況判断をして誰もがシュート、ドライブ、パスができる”というところまで持っていければ面白いのではないかな、と。それを基本にした戦術などを考えています」
―ビッグマン不在のチームは数多いと思います。175cmの選手もいろいろと工夫していくことで、190cmの選手に対抗でき得るということですか?
「数値的な根拠があるわけではありませんが、この部分の気持ちは絶対に選手たちが持ち続けてほしいものですね」
―片峯監督自身、サイズ的に恵まれた身長ではなく、大学時代もガードでした。“15cm”というのは現役当時の経験に基付いたものなのでしょうか?
「その差は何とかなると思ってプレーしていました。留学生とは25~30cm以上の差がありましたので、自己分析を徹底的にしました。自分の方が勝っていること、劣っていることをしっかりと分け、勝っていることだけで勝負をする―負けていることに関してはチームで補ってもらうという感じでしたね。15cmぐらいの差であれば、自分で何とかできると考えていました」