「U15(中学)までに身に付けてほしいスキル」と「コーチングスキル」~近藤義行氏(元市船橋高男子監督)

 市船橋高男子監督をはじめ、高校男女やアンダーカテゴリー日本代表チームリーダーとして長年指導してきた近藤義行氏(現在は市船橋高教頭)に、「U15(中学)までに身に付けてほしいスキル」「U18(高校)プレーヤーへのアプローチ」など、指導現場で感じた“必要なスキル”やそれに対するコーチングスキルを聞いてみた。

近藤義行
「点を取る楽しさを選手に教えてほしい」と近藤義行氏

普段の練習は失敗が許される場所でなければならない

――U15(中学)までに身に付けて欲しいこととは、どのようなことでしょうか?
「ドリブル、パス、シュートなどのスキルに関しては、コーディネーションなども含めてさまざまなことを練習していると思います。とにかく、プレー経験年数が浅ければ浅いほど、利き手というものがないような状態が望ましいと考えています」
――それは、左右差や得手・不得手をなくすということですか?
「得意・不得意をできるだけなくしておくことが重要です。どちらの手でもドリブルができ、パスができ、シュートができてほしいものです。発育・発達の段階で筋力のバランスやパワーが足りないということはあっても良いと思っています。
 左右差をなくすようにバランスを取るには、右利きであれば左の練習を多くするなど、割合を変えてみることも一つの方法です」
――プレーヤーがやりやすい(プレーしやすい)ことばかりを練習しないようにするということですね。
「プレーヤーはどうしてもやりやすいことだったり、失敗しないように練習をしたりする傾向があります。普段の練習は失敗が許される場所でなければなりません。そこで失敗する回数が多いプレーヤーほど、試合で成功する回数も増えていくと思うのです。
 相手チームに左右差などの特徴を見抜かれ、いつもどおりにプレーできないということが起きないようにする必要があります。試合で成功しなければ、なかなかモチベーションも上がっていかないのではないでしょうか」
――利き手ではない方を優先して練習することを指導者側も理解しておく必要がありますね? プレーが成功したのか、失敗したのかだけでプレーヤーを見てはいけないと。
「プレーヤーにゲームなどを自由に行わせたとき、指導者は“違和感”のあるプレーを全てチェックし、それを修正していく…というイメージですね。
 例えば、左方向へパスする場合でも強いパスが右手だけでしかできない場合があります。このような場合に、ボールを移動させて左手でパスができるようにアドバイスしていきます。ディフェンスが離れていればパスは通りますが、近くにいれば通すことは難しいということをプレーヤーに伝えていくのです。
 このようなことをドリル化して練習に落とし込んでいくことが良いと思います。右利きのプレーヤーは左手、左利きは右手の練習を多くするという工夫が必要になってきます」
――コーチの抱く“違和感”という話がありました。選手も自分のプレーで何ができて、何ができないかを知る必要がありますね。
「コーチは選手が潜在的に持っている能力や長所を出せていない場合、それを引き出す役目があると思っています。また、苦手なことを克服するためのアドバイスやメニューを与える必要があります。この両方を見なければなりません」
――学校の部活動では、選手数も少なくありません。
「コーチは、選手が40人いれば40通りの方法を持つことが理想です。これが1つの方法に型をはめていこうとすると、はまらない選手も出てきます。当然、チームルールをティーチングして練習していく時間も必要です。そのため、ミニバスからU15(中学)までは選手それぞれにピンポイントで指導できることが一番大切だと思います」
――その中で、当然多くのスキルを身に付けていかなければなりません。近藤先生が考える“最も優先したいスキル”とは何ですか?
「U15までに、理想としてはディフェンスの楽しさを教えてほしいのですが…競技歴の浅い選手にフットワークばかりさせても、楽しくなくなってしまいます。1時間練習するのであれば、全てボールを使った練習をしてもらいたいものです。
 バスケットボールは究極、ディフェンスが大事なのですが、点を取り合うスポーツです。点を取る楽しさを選手に教えてほしいですね」
――まずは、シュートということですね。
「シュートするのが楽しい、試合でたくさんシュートしたい、いろいろなシュートを覚えたいというような欲が出るようになっていることが重要ではないでしょうか。そして、高校に入って体が整いはじめ、筋力もアップしてくれば、さまざまなことができるようになると思います」
――理想としてはオフェンス、ディフェンスの楽しさを教えてほしいと…。 「ディフェンスの必要性や重要性、楽しさまでを感じ取ってもらいたいのですが、仮に間に合わなかったとしてもオフェンスの点数の取り方など、“シュートが好き”という方向に持っていってもらいたいですね。U15では練習時間も短いでしょうし、3年間をフルに使うこともできないでしょうから」
――シュートに関連して、コーチが選手に教えてほしいことはほかにありますか?
「自分だけがボールを持っているわけではありません。チームメイトからボールをもらう必要があります。だからこそ、『良いパスをもらえたお陰で、良いシュートができた』や『自分が外したシュートのリバウンド取ってくれたから臆せずシュートできた』というような繋がりを感じてほしいですね。そうすれば、次に良いパスを出そうとか、リバウンドに飛び込んできようなどといったことに発展していけば、選手として良い方向に行くと思います」

コーチは失敗を良しとする場合と、絶対にだめだという場合を見極める必要がある
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